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福岡地方裁判所小倉支部 昭和44年(ワ)1051号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕四、ところで前記認定のとおり被告は昭和四三年九月一〇日原告らが賃借している前記三筆の土地および本件土地のうち本件土地のみを買受け同月一七日その旨の登記手続を了したのであるから本件建物の敷地たる前記三筆の土地につき原告らが高西に対し賃借権を有することは明らかで被告も争わないところであるが本件土地につき被告が新所有者となつた場合譲渡された本件土地につき建物を目的とする賃借権を有する者は右賃借権の登記手続をするか建物保護法第一条により右土地上に登記した建物を有しない限り右土地の新所有者に対して右賃借権を対抗しえないところ原告らにおいて右賃借権の登記の存在については何ら主張立証がなく成立に争いのない甲第一八、第一九号証によれば原告らが本件建物につき共有の保存登記手続をなしたのは昭和四五年一月二一日であつて賃借権者の対抗要件としての建物の登記は新所有者が土地所有権を取得する即ち土地所有権取得登記手続完了前であることを要するに右建物登記が被告の本件土地所有権取得登記完了後であることは明らかであるから右建物が本件土地上に存在するか否かは別としても建物の右所有権保存登記の存在をもつて本件土地上の賃借権を被告に対抗しえないといわねばならない。しかしながら成立に争いのない甲第一、第二号証によれば本件建物につき「表題部の登記」が存在しその所有所有者は町田正忠である旨記載されておりそれは原告が本件土地につき所有権移転登記手続を完了する以前において存在したことが推認されるところ建物保護に関する法律第一条において土地の賃借人の登記した建物所有をもつて土地の賃借権の登記にかわる対抗力を付与している理由は取引の対象となる土地上に現存する建物と同一と認められる建物の登記とその所有者の記載によりその登記簿上の所有名義人が賃借権等土地の使用権を有することを推知できたからであるからこれを建物自体の権利についての対抗要件である登記と同一に解する必要はなく右法律一条にいう「登記」は所謂「表題部の登記」であつてもその所有者の明示されたものであれば足りると解され本件建物の「表題部の登記」に所有者と記載された町田正忠は原告らの被相続人であることは前記のとおりである。

しかも右建物の登記をもつてその所有者が新土地所有者に対して賃借権を対抗しうるのは当該建物の登記に所在の地番として記載されている土地についてのみ賃借権の対抗力を有すると解されるところ本件建物の「表題部の登記」(甲第一、第二号証)にはその所在として前記槻田字と記載され番地の記載がなく所有権保存登記(甲第一八、第一九号証)によれば本件建物は登記簿上右槻田字井尻八三八番地の一、同番地の一四、同番地の一八の三筆上に存在するように記載され所在地番としては本件土地の記載がなく弁論の全趣旨によれば本件建物が本件土地上に存在しないことは当事者間に争いがないものと解される。

五、しかしながら前叙説示のとおり本件建物はその北側部分を長期間に亘り理髪店として利用し、右建物の正面である北側は県道に面し本件土地がその庭としての形態を有して右道路に面しているところ本件建物の東側には右店舗への一枚引戸出入口があるが通常は県道より本件土地を通つて右店舗へ出入りされて利用されていたこと、高西逸夫は右実情を十分に熟知し、被告が本件土地を買受ける直前右高西は田中および原告らに対し本件土地は賃貸借契約に含まれていないことを理由に被告が右土地を買受けて駐車場を営むなどと申入れているので被告も本件土地買受前において本件土地の状況は十分認識してこれを買受けたものと推認され成立に争いのない甲第三乃至第六号証によれば本件建物の敷地はもともと一筆の土地(北九州市八幡区大字槻田字井尻八三八番地の一)であつて本件土地である同所八二八番地の三四は地目用悪小路一平方米の土地にすぎなかつたのであるが昭和三八年七月一〇日所有者高西逸夫は右八三八番地の一を地積訂正のうえ同所八三八番地の一、一五、一六、一七の四筆の土地に分割し昭和四〇年一一月一〇日右八三八番の一を更に右一および一八に分筆し昭和四二年一〇月六日には本件土地としての八二八番地の三四の地目を宅地地積を3.30平方米と変更し、同年一一月九日には右土地と前八二八番地の四、同番地の一五を合筆して地積30.01平方米としたものであることが認められるところから本件土地である八二八番地の三四は現在における範囲の土地のうち約一〇分の一のごく小範囲の部分であつたにすぎず他の部分はもともと本件建物の敷地としての土地であつたものが分筆され更に合筆されて本件土地にくみ入れられたもので原告らにおいて前記分筆前本件建物につき保存登記がなされゝば本件土地のうちの約一〇分の一である従前の八二八番地の三四を除きほとんどの土地が本件建物の所在番地として記載されるべき実情にあつたのであるから被告は本件土地を買受ける際登記簿を閲覧すればその以前から前記のとおりの分筆、合筆が行われている実情が判明するものと推察されるので以上の事実を綜合すれば従前の八二八番地の三四を除く本件土地は前記説叙のとおり本件建物の「表題部の登記」をもつて原告らは被告に対し賃借権を対抗しうるというべく、又従前の八二八番地の三四は現状としては前記のとおりでそれは独立しては存在価値がなく本件土地の他の部分は前記家屋敷地と不可分密接な関係にあるのであるから右土地も本件土地の他の部分と分離して考えるのは相当でないので従前の八二八番地の三四についても原告らはその賃借権を被告に対抗しうるものということができる。 (松尾俊一)

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